八ヶ岳・横岳西壁小同心クラック

日程:2009年3月19日(夜)〜21日


3月19日
 22時に二俣川をS車で出発し、小淵沢の大きな駐車場のある道の駅で寝酒をして仮眠した。
3月20日
 6時30分に起床するが、予報どおり雨。この日は赤岳鉱泉まで入山で、余裕があれば偵察の予定だった。天気は回復傾向で雨もやがて上がるだろうと見込み、9時まで二度寝することにした。起きると雨もほぼ上がった感じなので、洗面等をして出発。
 美濃戸口で計画書を提出し、準備をしてS車で美濃戸へ向かう。林道を少し進み、橋への下り坂から雪が出てきた。
 わだちの中は雪が融けているが中央は雪で高くなっていて車の底が当たり気味。あと数百メートルで美濃戸という道のカーブで車が2台進めなくてチェーンを着けていた。滑って進めないようだ。我々はその脇を進んだがやはり滑って止まってしまった。
 ところが、いったん止まった後、エンジンはかかるがドライブモードにすると止まってしまう。Sさんが、エンジンが動いていない状態で重いハンドル重いブレーキで苦労して坂道を待避場所までバックさせた。
 オーバーヒートかなどいろいろ原因を考えるが、結局プロに任せるのが早いとディーラーなどに連絡を試みるが土曜日のためうまくいかず、JAFを呼ぶことにした。1時間半ほどで来てくれ親切に対応してくれた。しかし、現場では原因が特定できず美濃戸口までロープで牽引して、そこからはJAFの方でディーラーまでレッカーで運んで修理してもらうことになった。
 この時点でもう赤岳鉱泉のテン場に行くのは無理と判断した。美濃戸の小屋に素泊まりして翌21日ここからアタック態勢で小同心クラックをやることにした。22日は車の回収に当てることにした。
 美濃戸口までのロープ牽引を終えたSさんをJAFの方が親切に美濃戸まで車で送ってくれた。
 16時ころやっと二人で赤岳山荘に落ち着いた。いっぱいやりながらおかみさんや同宿の人らとくつろいだ。

3月21日
4時に起床してラーメンの朝食を摂り、不要な荷物を赤岳山荘に置かせていただいて薄明るくなった5時過ぎに出発した。天気は申し分ない。昨年悪天で2度断念したため「3度目の正直だ」と期待が高まる。 赤岳山荘を出て橋を渡ると、道はつるつるに凍っているところが多い。アプローチの林道なのでアイゼンは無用と適当に足場を拾って進む。しばらく行ってSさんがアイゼンを着けるというので、私も着けた。着けると歩くスピードが違う。時間を節約するという点では着けた方がいいだろう。
 7時45分赤岳鉱泉着。テン場にはたくさんのテントがあるが、人影はない。もうそれぞれの行動に出た後なのだろう。小同心に取り付くパーティもいくつかあることだろう。どうせ最後だろうし、順番待ちもあるだろう。そんなに急いでもしょうがない。大同心稜の急登もあるので、少しゆっくり準備した。

8時30分に赤岳鉱泉を出発。大同心稜の急登の上部では凍っているところもあった。ピッケルやバイルでは跳ね返されてピックが刺さらない。よく研いだアイスアックスじゃないとダメなんだろう。最上部は12月は左から巻いたが、今回は大同心基部まで雪壁を直登した。悪天の時に見た大同心、小同心は上部もよく見えず威圧感があったが、今回は明るい日差しの中でいくぶん小さく見えた。

大同心の基部からは大同心沢の上部をトラバースして小同心へと向かう。大同心の基部から右にへつるようにバンド状を15mかそこいら行くと、左手に登ってくださいと言わんばかりの階段状の岩があった。数歩登ったが、このまま行くとどうも行き詰まりそうだ。下をよく見ると雪壁にトラバースしている踏み跡があった。岩を降り、岩の基部右下の雪壁を20mほどトラバースし、後ろ向きに10mほど下った後少し登って出っ張っている岩裾を回り込んだ。さらに雪壁を少しトラバースし一旦岩の基部近くまで上がって、また下がってから斜上トラバースすると、開けた小同心クラックの取付に着いた。

 ちょうど先行パーティが1ピッチ目を登っているところだった。手前のトラバース中に、大同心ルンゼを登ってから懸垂下降してきた若者二人パーティとかち合ったが、我々に先を譲ってくれるという。先に行かせてもらうことにする。取付は右の方が壁が寝ているが、アンカーが見あたらない。立っているがハーケン2本がある左方、ルートの真下をビレーポイントにした。(確保者が落石を避ける観点、登りやすさから言えば右から取り付きクラックの方へ左上する方がベターだと思うが、万一の転落を考えるとビレー者の確保支点が欲しかった。)

【1ピッチ目】
 11時、まずNがリードで登る。立ってはいるが、八ヶ岳特有のドアノブみたいなホールドがたくさんあって問題ない。凹角に入るまではハーケン等の支点が見あたらないので小さな塔状の岩を支点とした。フェースが終わると凹角状になってそこに入るとごく小さなテラスで、ペツルハンガーボルトが2枚打ってあった。いったんそこを通過したが、2枚あるのでビレーポイントかと迷い、また戻ってビレーのセットを始めた。しかし、登った距離はあまりに短いし、何より核心部などなかった。なので、また登り始めた。未熟さ故の時間のロスだった。左のフェースを登るとチムニーになった。どうもここが第1の核心部のようだ。が、体を外に出しさえすれば難しくはない。そこを越したところにスリングがかかったペツルハンガーボルトのアンカーがあった。そこでピッチを切った。
【2ピッチ目】
 つるべ式で次はSさんがリードした。少し時間がかかっているようだった。2ピッチ目の終了点手前にあるハーケンにスリングを通すのに時間がかかったとのことだった。Sさんは、2ピッチ目は右の凹角状と左のクラックの分岐の小テラスで切っていた。その2ピッチ終了点の手前のチムニーが立っていて、ビレー点へ乗っ越すところがちょっと見るとチョックストーンのようにも見える岩の出っ張りがあったが、凹角登り(ステミング)で容易に通過できた。ハーケンも2本ほどあった。
【3ピッチ目】
 3ピッチ目はNリード。左右のルートのうち、左の出だしが少しかぶったクラックを行くことにした。クラックの高さは2〜3mくらいか。ここが第2の核心部のようだ。出だし少し上のクラック内にハーケンが2枚ほどあった。
 最初の2、3歩クラックの外側の壁に足場を求め次いでクラックの中に体を入れて少しずり上がると、自然にクラックの抜け口左側にある四角いイスのような岩に座ることができた。ずり上がるときにザックのウエストハーネスがちょっと引っかかった。Sさんは、クラックの外を使ってステミングで登ったとのこと。その方がきれいに登れたかも。
 このクラックを登っている途中に右足のアイゼンがはずれてしまった。流れ止めのバンドで落ちずにすんだ。アイゼンはグリベルのエアーテック・オーマチック。靴はスポルティバのネパール・エクストリーム。自分では長さ等靴と合わせるよう調節していたが、山行前に確認したとき、つま先の金具が靴先の形状とぴったりではないのが気になっていた。
 先述のイス状岩に腰掛けて前にある岩壁に押しつけてアイゼンを再装着しようとしたが、ほんの少し手が届かない。少し上に平らなところが見えたのでそこまで片方はアイゼンを装着せず登った。直前に湘南鷹取山でプラブーツで岩トレをしていたので不安はなかった。ハーケンに自己確保を取って再装着できた。
 あとは易しい岩を少しで大きなバンドへ上がった。すぐ目の前の岩塔の壁にペツルハンガーボルトが2枚あった。左方向には水平の草付きバンドが数メートル見え、その先は見えなかった。右方向は切れていた。正面には切れた右側から溝が左上し階段状に踏み跡らしい感じにも見えた。(あとでよく見たらその溝を上がりきる前にペツルハンガーボルトがあった。) ここからは左手の草付きをたどって頭に行けるのではと踏んで、ここでピッチを切ることにした。
【4ピッチ目(小同心の頭まで)】
 Sさんが上がってきた後そのまま草付きバンドを左へ見に行ってもらったところ、そこも登れそうだが正面の方が良さそうとのことでリードで正面の溝を登ってもらった。溝から上がって少し行ったところが小同心の頭で、そこにはしっかりしたビレーポイントがあったようだった。大きなバンドでピッチを切らず、もっとよく観察してこの4ピッチ目も3ピッチ目から引き続いて登った方が時間節約の意味でも良かったと反省した。ともあれ13時30分に小同心の頭着。

 小同心の頭先の平らなところで少し休んだ後、ロープを結び合ったまま、雪稜上、岩の基部、岩の間を通ってさっさと進むと、正面に岩壁が現れた。横岳頂上へ続く岩場だ。
 岩が少し顔を出した雪のリッジ状の先に壁が立ち上がる。その壁は下部が少し立っている。その基部まで登るとハーケンが2枚あった。そこをビレーポイントにしてスタカットで登ることにする。私がビレーのセットをして、Sさんに登ってきてもらい、そのままリードで登ってもらう。
 Sさんは最初直上した。そこはかぶった凹角状で、ハーケンもあったが、右の方が易しいのでトラバースしたのち左上していった。
 私は右の方にドアノブ状のホールドが豊富にあったので下部は右上し、その後左上気味に登ると時間を要せず横岳奥の院に飛び出した。そこのビレーポイントは「横岳」の道標。14時20分に終了。登攀具を片付け、写真を撮ったりしてしばらく休んだ。車の整備をしているディーラーに携帯電話が通じ、修理済みだと分かり、今日下山して引き取りに行くことにする。

下山は硫黄岳経由で行くことにした。14時40分に出発し、ナイフリッジの雪稜を下り、赤岳鉱泉側の鎖場を通り、その後岩峰の佐久側の基部雪壁をへずると、あとは緊張するところもない。ただ、風が強くそれに抗して歩くので疲れる。赤岳鉱泉16時45分着。2時間かかった。

 車の引取りがあるので、少し休んで急いで下る。荷物を預かってもらった赤岳山荘に18時10分着。赤岳山荘のおかみさんが、美濃戸口にタクシーを予約してくれた。荷物をパッキングして出発し、ヘッドランプを点けて急ぎ足で美濃戸に向かった。30分ほどで美濃戸に着き、来ていたタクシーに乗って茅野市内のディーラーに行き、車を回収した。結局車の故障の原因はエンジンに空気を送るパイプが外れていたとのことだった。雪道で車が地面に擦ったりした振動で外れたのかと聞くと、その程度では外れるものではなく、整備か何かしたとききちんと締められていなかったんではないか、という話だった。パイプをはめただけなので修理費用は請求しないとのことで費用は発生しなかった。なお、JAFの費用も保険が適用されたので負担は発生しなかった。

昨年の10月、12月の小同心チャレンジは、いずれも降雪で現地中止のやむなきに至った。今回は厳しい寒さもなく、むしろ恵まれすぎていたコンディションで少し気が引けるが、3度目にして成就できてうれしかった。
 当初の予定では22日は昨年末のリベンジで赤岳主稜をやるつもりであったが、車の故障もあり中止した。でも、車を出して苦労したであろうSさんには申し訳ないが、トラブルはトラブルでどう対処するかいろいろ経験できたのも悪くなかった。

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