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われわれとしても大堰の撤去は少なくても短期間には無理だという認識が強まっておりました。 折りしも13年6月16日守口文化センターにおいて、ラジオ大阪主催の「第3回淀川河川 フォーラム」が開催され、その進行に際して、淀川の生物の研究者が壇上に並んで聴衆からの質問に応える一幕がありました。兼ねてから淀川のイタセンパラの保護のありかたに関して多くの疑問を抱いていた木村は同伴した会員高田昌彦と共に、彼等にいくつもの質問をぶつけました。その結果 研究者も城北ワンド群を中心としたイタセンパラの保護に関して 何ら自信はなく、多くの不安を抱えたまま対策に苦しんでいる状況であることが判明しました。 ここで深刻に考えました。 淀川下流部つまり淀川大堰によるダム化の影響の強いワンドではイタセンパラの生息環境 が著しく劣化し、誰もその将来について自信を持っていない。この際思い切って本種の緊急避難対策として、大堰の影響の少ない上流部にワンドを掘削したらどうだろうか。 1971年、下流部の城北ワンド群で、市岡高校生物クラブによってイタセンパラが発見されたのと同じ年の秋に、紀平肇氏の指導する枚方市立第一中学生物部によって、この種が発見 されています。その後も何回もこのワンド群で確認されているのだが、現在は淀川の人為的な水位 低下のため楠葉ワンド群は干しあがっています。これをワンドとして機能させるには約4メートル掘り下げる必要があるが、しかしその事によってイタセンパラの生息できるワンドが復活すれば、本種の緊急避難対策としては、最上のものではないだろうか。今こそイタセンパラの生息適性のあると考えられるワンドの復活に賭けるべきではないだろうか。 さて私は淀川事務所長宮本博司氏とは書信の交換はしていたが、まだお目に掛かったことがありませんでした。ところが6月16日のフォーラムに所長も出席されていて、私の帰り際に出てこられて挨拶を交わしました。その折森田和博環境課長とも挨拶しました。このように対面 の機会を得ていた折でもあるので、直に所長に連絡を取って面会を希望した所6月29日に約束を取り付けることが出来ました。当日淀川工事事務所を訪ねて所長と会談。当方が現在の城北ワンド群を中心とするイタセンパラの保全体制は不安定であると考えると述べると、所長は従来あまりに治水と利水対策に走り過ぎて、環境保全や生物対策 を怠ったことを反省している。今後できるだけ当方の言い分をきいて協力したいと述べられました。そこで当方の新規ワンド掘削の希望を述べ、森田環境課長も座に加わって、至急に現地の視察を行うことになりました。 その視察は7月13日に森田課長の案内で、研究者サイドの紀平肇、河合典彦、小川力也の三氏も加わって行われ、旧楠葉ワンド群以外に何箇所かの視察を兼ねました。その結果 ほぼ考えていた通りの成案を得たので、7月16日付けで宮本所長宛、楠葉の第一番ワンドを実験的に掘り下げてみて、順次ワンド群全体に広げていくやり方で、楠葉ワンド群を復活させて欲しい旨要請を出した所、折り返し7月18日付けで返信あり、早速その方向で実施するよう検討を進めるとのことでした。単調でドライになってしまった淀川を、多様でウェット な淀川に戻す方向で取り組みたいと書き添えられていました。 さてこの問題ではさらに進展がありました。環境省自然環境局長小林光氏が8月11日に淀川のワンド視察のために来阪されたのです。小林氏は30年来の私の知人ですが、特に今回ワンド問題に強い関心をもたれ、城北ワンド群と採掘予定の楠葉ワンド群跡を視察され、終わった後で長田芳和、紀平肇両氏と私を加えて、宮本所長、森田環境課長と会食の席をもたれました。その結果 なるべく早くワンドの試掘を行う事が決定されました。 なお今回の新規ワンド掘削に関しては、川那部浩哉博士(琵琶湖博物館館長)の力強い後方 支援を得たことを挙記したいと存じます。博士は京都大学教授の頃からずっと淀川の生物保全にかかわってこられましたが、今回も多忙のなかで、絶えず根回しをして私どもを助けて下さいました。 ここで城北ワンド群を中心とする下流部のイタセンパラの生息状況に触れたいと思います。 河合典彦氏の長年にわたる熱心なイタセンパラ稚魚の浮上数調査によると、本年の稚魚発生状況は7800に達し、最近の最多を記録しました。一部新聞報道には、イタセンパラ絶滅の危機は去ったとの印象を受けますが、決して状況はそんなに生易しいものではありません。本来なら何万の稚魚が浮上して当然なのに、わずかに一万以下です。稚魚はその一部しか成魚にならない。おそらく成魚になるのはその何パーセントに過ぎないでしょう。この程度では絶滅予想範囲内の上下浮動と見るべきでしょう。 私は濃尾平野河川におけるイタセンパラが、原因不明のまま絶滅してしまった悲哀を思わずにはおれません。イタセンパラは強さと弱さを兼ね備えた小魚ですが、このように原因不明のまま絶滅する恐れが多分にあるのです.。あえて緊急避難対策の必要とその速やかな進展を祈る次第です。 なお淀川水系のアユモドキに付いて、目下復活作戦を起案中です。行動に移りましたら改めて報告をさしあげます。私事にわたりますが私は来年で満80歳になります。今でもしんどくて、この仕事を長く継続する自信がありません。後一年以内に成功させたいと念願しております。よろしくご協力をお願い申上げます。 |