平成19年度下半期ならびに平成20年3月末までのご報告  

今回は報告が随分遅れたことをお詫び申し上げます。
平成19年度後期はイタセンパラ問題の進展はあまりなく、私はもっぱら淀川のイタセンパラに関する本の出版に集中しました。なお進展がないと申しましたが、要するに淀川のイタセンパラは2年連続して浮上仔稚魚がゼロであることでほぼ絶滅と認められる状況となっており、後は如何にしてその再生を計るかの問題に集中すべきものですが、何か再生論議がはっきりしない印象がありました。
さて私の著作となるこの本は『淀川のシンボルフィッシュイタセンパラ−その絶滅と再生について−(B6版170頁945円)』と題して、19年10月20日付で発行しました。製作部数は3000です。発行元は私の友人の良心的な小出版社です。内容は愚直そのもので、書きにくいことも全部書きました。私の貧しい人生経験では、一番強いのは多少時間がかかるかも知れないが愚直に過ぎるものはないということです。そのため随分きついことを書いたなとか、あまり追い詰めすぎではないかとも言われましたが、私は後悔しておりません。結局本当のことは強いのです。
私もまた関係者一同販売のため精一杯の努力をしたのですが、素人の悲しさのせいか売行きはあまりよくありませんでした。
ここで思いがけないことが起こりました。以前にイタセンパラ問題で取材に見えた朝日新聞の野呂雅之論説委員より電話があり、同氏が国交省近畿地方整備局長布村明彦氏に面接してイタセンパラ問題について話を伺ったところ、布村局長は私の著書を持っており、私の要望は電気ショッカー船による外来魚駆除の提案を除いて全部受け入れる、とのことだったそうです。
また12月20日付朝日夕刊で前記の野呂氏が『消えたシンボルフィッシュ』と題して好意に満ちた紹介をして頂き、また『自然保護誌』が20年3、4月号でこれまた的確で好意的な紹介をして頂きました。他にも好意的な紹介をしていただいた『にっち』誌や、京都新聞の釣り欄に紹介記事を載せて頂いた平井忠司氏がありました。
話が変わりますが、さらに思いがけない喜びもありました。それは平成19年12月20日の天皇陛下のお誕生日の記者会見で、陛下がブルーギルについて話されたときに、私が中村守純博士と共に当時皇太子殿下であられた陛下にインターヴュをした30年前の思い出に触れられて、私の名前を挙げられたことです。当時私は淡水魚の保護問題で時々東宮御所に報告に伺っていたのですが、陛下がまだ私の名前を覚えていて頂いていたことは、何にもまして深い感銘でした。
ただ陛下がご自身の科でもないのに、ブルーギルがわが国の淡水面で害を及ぼしていることに心痛されていることが、淡水魚保護を仕事としている身にはつらいことでした。
こうして平成19年はいささか明るい前途を見せてくれることとなりました。
平成20年1月12日には“水辺の危機、淀川からのシグナル”という名称のシンポジウムが開催されて、それに出席しました。これは大阪府環境農林水産総合研究所と大阪工業大学の共催によるもので、外来種の異常繁殖と在来種の魚の危機を訴えたものです。100名以上の出席者がありました。
さて1月15日国交省淀川河事務所長吉田延雄氏より電話があり、イタセンパラの保護について説明に伺いたいとのことでした。そこで布村明彦近畿地方整備局長との面談を希望したところ、翌16日折り返し電話があって、2月7日午前9時から9時30分にかけて、吉田氏同道の上局長が拙宅に見えるとのことでした。
当日高田昌彦を交えて拙宅で先方の説明を伺いました。先に野呂雅之氏より大体のことは伺っていたのですが、局長御自身の口から改めて説明を伺うのは実に感激的でした。
さて先方の説明によりますと、まず城北ワンドについては淀川大堰の平常時の貯水位を現在より約50cm下げて概ねOP+2.5mとし、水位変動幅の拡大を計る。そのため影響がある取水口の改良に取りかかるが、平成25年ごろの完成を目標とする。
これはすばらしい新提案です。私が淡水魚の窓のホームページで主張していたが、とても無理だと半分諦めていたものです。予想外の大きな収穫でした。
その外34〜35号裏ワンドで底泥の除去、ワンドの進入植物の除去を行う。
次に上流域のワンド再生については、まず楠葉地区で今後2年間でワンド5個の整備を完了すると共に今後10年間でワンドを倍増させる。さらに水制工の試験施工を4基実施しており、これは将来2基のワンドとなる可能性あり。その他唐崎、水無瀬、牧野区域等でワンド30基の整備を予定している。
木津川では19年度に上狛地区に3個のタマリを造成。今年度は右岸の新木津川大橋上流にタマリを整備中。また全体の再生計画を早急に作成する。
さらにイタセンパラの保護育成のために大阪府水生生物センターと協力して現在一つだけの保護池に加えて新しく大きい池を2個つくる。
最後に外来魚対策については、排水ポンプを用いてワンドの水位下げと流れを起こす実験を行う。水生生物センターと共同して人工産卵床による駆除を行う。外来種駆除釣り大会などNPO団体の支援を行う。大体以上の通りでした。
これに対して当方の希望として、できるだけ早くイタセンパラの再生を行うため、一番やりやすい楠葉ワンド群の活用を最優先されたい。また二枚貝の定着実験を早く開始されたい。なお先方は二枚貝の定着には自信があるとのことでした。また外来魚駆除の釣り大会を継続的に行うための支援を強化されたいと述べました。
この日の会議は非常に意義のあるものでした。国交省の近畿地方の最高責任者である整備局長が私共の要望を殆ど受け入れて頂いたことがはっきりと確認され、私共も協力意思を述べた会合だったのです。ただ私共としては公式の発表は先方に委ねるべきであると考えて、取りあえず内部的に内容の伝達を行いました。
3月1日にイタセンパラに関する公開シンポジウムが開かれました。関西自然保護機構と大阪市立自然史博物館の共催によるもので、イタセンパラに関係のある研究者たちが報告を行いました。私も聴衆として参加しました。少し気になったことは私の主張する楠葉ワンド群におけるイタセンパラの優先再生案に反対する意見が多少出されたことです。
3月16日には淡水生物保全研究会の小林氏と会うために大阪市立自然史博物館をたずねました。小林氏は魚類自然史研究会のシンポ出席のためと傍ら旧知の布村局長と会うために来阪されていたのです。なお小林氏は以前に環境庁自然保護局長でした。
この待ち合わせで気になったことは、小林氏が淀川下流部のイタセンパラ再生について布村局長と話をされており、この問題に触れられたことです。イタセンパラの城北ワンド群での再生については、研究者を中心として熱心な提案が出されているようですが、私としては現在外来魚率が90%以上を占めている状況ではかなり無理があるし、それを試みるとしても過度に人工的手法により、かなりの時間を要することとなる。それより下流部の水位を50cm下げることが決まった以上、それ以降に考えるべきではないか。楠葉ワンド群における本種再生の方がはるかに実現性が高く時間もかからないのだから、これを優先すべきであると考えています。
さて3月19日NHKテレビ関西で淀川のイタセンパラ復活についての放映があるとテレビで予告されました。ところがこの日放映は延期となりました。
わたしはNHKに電話して、何故延期になったのか、その内容はどういうものかを問い合わせましたが、明確な返事はなく、翌々日21日にもう一度電話して欲しいとのことでした。そこで21日にまた電話したのですが、依然としてはっきりした答えは得られませんでした。
そこで私は自分はイタセンパラ問題に30年以上係わっている者で、先日近畿地方整備局長とその保護に関する話し合いを進めて合意したこと。したがってこの合意内容に沿った放映であればかまわないが、もし違ったものであれば、NHKならびに国交省に抗議することになる旨述べました。ついで3月22日速達便でこの話し合いの内容を布村局長宛報告すると共に、このような困惑する事態も生ずるので、先日の合意内容を可及的速やかに公表されたいとのお願いを申し述べました。今回のNHKテレビ放映のネタはおそらく研究者筋から出たものでしょうが、照会に対する対応の仕方は感心できません。公共放送である以上責任者が出てきてもっと誠実に応待すべきでしょう。

以上かなり波乱に富んだ報告書となりました。私は何としてもイタセンパラの復活再生を楠葉ワンドで実現すべきだと信じています。一度再生が成功すれば、関係者は気分がずっと楽になります。
ただ外来魚に関しては、今の所あまり明るい眺望はありません。希望的観測に過ぎると言われるかもしれませんが、かなりの大洪水が出たときに淀川大堰を開放して、下流部淡水域に生息する外来魚を一挙に海に流し去ることができないかと夢想しております。
最後に一言附け加えたい。
それはこういうことです。
時流に変化が出ています。市民的発想を重視する傾向が強くなっています。それがどう現れるのか、ここ一年間注視すべきでしょう。
(平成20年3月31日)


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