見つけよう、伝えよう、素敵なアジアを。
<アジアン倶楽部通信 1999年8月号>

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アンニョンハセヨ?みなさん、お元気ですか。幸いノストラダムスの予言は外れてくれたので、今月も通信をお届けすることができました。8月1日にNHKで放映されたフェイ・ウォンの武道館コンサ−トの模様はご覧になりましたか?裸足で軽やかにステ−ジを舞いながら歌うフェイの姿が素敵でしたね。この夏、アジアに旅行に行かれた方も何名かおられるようなので、またお話を聞かせてくださいね。私も中国に行ってきたので、この後すぐにご報告します。
この夏休み(8月5日〜13日)に中国の延辺朝鮮族自治州と北京に旅行に行ってきました。春に一度行った時に、なぜか分からないけれど強く引きつけられ、必ずもう一度行ってみようと思いました。今回は少しゆっくり目のスケジュ−ルだったので、延吉(ヨンギル)と北京で‘中国の今’をあらためてしっかり感じとってこれたように思います。
まずは、延吉から。中国東北部の吉林省に位置する延辺朝鮮族自治州は、戦前からこの地域に移住した朝鮮族とその子孫約80万人が居住しています。と言っても朝鮮族だけが居住しているわけではなく、人口の半分以上は漢族であり、両者は特に対立することなく共存しています。州内には六つの市、二つの県があり、総面積は4万2700平方キロメ−トル。公文書は朝鮮語と中国語(漢語)で表記され、公立の民族学校における民族教育の実施、民族芸術団体の育成、朝鮮語のラジオ局やテレビ局の放送、朝鮮語の新聞・雑誌の出版活動など、官民あげて民族性の保持に努力しています。朝鮮族は中国国民なのでもちろん参政権を持ち、自治州政府の首長、県、市の正副第一指導者らが朝鮮族であり、幹部総数のほぼ半分を朝鮮族が占めています。 延吉はその州都であり、人口の60パ−セント近くが朝鮮族で、ほぼ全員が民族教育を受けてきているので当然朝鮮語は完璧に話すことができ、また漢語も日常的に話すバイリンガルです。実際に朝鮮族同士で話しているのを聞いていると、大体は朝鮮語で話しているのですが、突然漢語が入ってきてしばらくそのまま漢語で話し続け、何かのきっかけでまた朝鮮語に戻ったりしていて、おもしろかったです。漢族とは漢語で話しているのですが、逆に漢族の人が朝鮮語を勉強することも多いらしく、また中学校(初級中学)や高等学校(高級中学)では選択必修の外国語が日本語と英語なので、日本語の基礎を勉強したことがある人がたくさんいます。もっとも卒業するとすぐに忘れるようで、また日本人観光客もほとんど来ない地域なので、街中で日本語を耳にすることは一度もありませんでした。(国境が近い北朝鮮の取材にTV局の人間やジャ−ナリトが訪れる程度のようです) この辺りは日本の旧満州国の支配下にあった地域なので、韓国同様幼少期に日本語教育を強制されたお年寄りは少なくないのですが。また、抗日ゲリラによる抵抗運動の拠点でもあった場所でもあります。 今回の旅では、前回の旅の最後に知り合った現地の方にガイドしてもらうことにしました。パクさんという個人タクシ−の運転手さんなのですが、数年前まで日本に4年間程滞在していたそうで、日本語が非常に上手な方です。(私と同年齢位の方です) 日本語学校と専門学校に就学しながらアルバイトで少しずつお金を貯め、故郷に帰って車と家を買ったという努力家で、旅の間いろんな興味深いお話を聞かせてもらえました。高校まで日本語の勉強をかなりみっちりやってから日本に行ったそうですが、やはり日本では一年位は非常に苦労したそうです。出会った日本人にはいい人も悪い人もいたけれど(当然か…)、延吉に比べるとやはり日本は豊かで暮らしやすく、悪い印象はないとのこと。「安室奈美恵ちゃんはがんばってますか」と聞かれたので、「最近ちょっと落ち目で、それよりも新人の宇多田ヒカルという子が大人気ですよ」と答えると、「日本は目まぐるしいですね」と笑っていました。 日本への就学ビザは簡単に下りたのか尋ねると、50人位が申し込んで自分を含めた6人が許可されたとのこと。「ラッキ−でしたよ。でも、ここは朝鮮族の街なので本当は日本よりも圧倒的に韓国に行きたがる人が多いんです。そのための偽装結婚が増えてきたので、最近韓国政府は中国人の渡韓にすごく神経質になっていて、年々難しくなってきました」 どうやら、外国人の流入に拒否的な姿勢は日本も韓国も変わらないようです。でも、同じ民族なんだから、もう少し開放してあげればいいのに。もっと行きやすいロシアや中東まではるばる出稼ぎに行く人も多いとのこと。当地の経済難は子どもの出生率にも影響しているようです。朝鮮族の出生率の低下を憂慮して、最近中国政府は子どもを3人までは生んでかまわないとの許可を出したのですが、経済的理由で1人しか生まない夫婦が圧倒的だそうです。パクさんのように経済的に成功している人だけが2人、3人と子どもをつくるのですが、息子さんが1人だけのパクさんにそのあたりを尋ねると、「面倒だから子どもは1人で十分ですよ」と苦笑していました。 うれしいことに、再会を祝して夕食に招いてくださったので、マンションへ。日本製のビデオやテレビが整った広い御自宅でくつろがせてもらいました。素敵な奥さんの手料理がとても美味しかったです。朝鮮料理と中国料理が混じって食卓に並んでいる様子は、和食と朝鮮料理が混じった在日の家庭と同様です。キムチは市場で買ってきた物で、昔は家でちゃんと漬けたけれど今の若い奥さんはみんな買ってくるそうです。日本や韓国と同じですね。地元のビ−ルや中国製のス−パ−ドライ(最近、アサヒビ−ルは中国の青島ビ−ルと提携した)を飲みながら、よもやも話を。日本では<法輪講>のニュ−スが最近多いことを告げると、そうそう、こっちでは今大変なんですよ、とのこと。テレビのニュ−スでも、元信者が(指導者の李師に欺かれたが今はもう目が覚めた。他の信者も一刻も早く脱会してほしい)と盛んに訴えており、国をあげて反法輪講キャンペ−ンをしていました。それにしても、李師は本当にCIAの協力者なのでしょうかね?アメリカならやりかねないけど…。「街で日本車やベンツ、アウディなどの外国車をよく見かけるけれど、誰が乗っているんですか?」と聞くと、「国内車の保護の為に、外国車には定価と同じだけの関税を掛けているから乗れる人間なんてほとんどいないのですが、実際は安い中古車を密輸しているんです。で、関税を払わなくても堂々と所有できるように、裏で働きかけることのできる力を持つ人しか乗れません。日本車はカリ−ナが多いです」 う−ん、複雑な気分。 食後は、なぜかパクさんが持っている松田聖子の(嫌いなんだけど…)MTVのレ−ザ−ディスクを見ながら、すいかをいただきました。「タクシ−はもうかりますか?」「僕は自家用車だからまだいいんだけど、この街は産業があまりないからみんながタクシ−ばかりするので困ります。こんなに小さな街なのに4000台位タクシ−が走っているんですよ」「そりゃ、大変だ。でも、あなただったらいろんな仕事がこなせるでしょう?」「ええ、まあ、こうやって旅行者のガイドしたりなんかしてね。この間はこっちに仕事で来ている韓国人のビザ切れを何とかしてあげるのに大変でしたよ」「今の中国はビジネスチャンスがゴロゴロしているから、頭のいい人ならもうけることも簡単でしょう?」「うん、僕もいろいろ考えているんだけど、やっぱり資金がないと難しいですね」 二人でどんな商売がいいかいろいろ考えたのですが(笑)、確かにおもしろいですね、今の中国って。私も日本の教師なんかやめて、中国でビジネスを始めようかな!?21世紀のビル・ゲイツか、孫正義を目指して。まあ、そんなに甘くはないか(笑)。 パクさんの案内で延吉や周辺の街をいろいろ見物したので、思いつくままに紹介します。まず、延辺博物館を。かの江澤民書記長閣下も来訪された、朝鮮族の民俗を展示した博物館です。写真や実物で分かりやすく、朝鮮文化について説明してありました。こういうのが新大久保か大阪の生野区辺りに欲しいよね。次に熊牧場に行きました。漢族の人がオ−ナ−で、なんで熊なんか飼うかというと、生きた熊の肝臓から抽出した体液から非常に高価な漢方薬を作るそうです。年に数回しか抽出できないのだけど、それでも割りに合うそうです。観光客用に館内を開放しており、私も特別に慣らしてある熊さんの頭をなでなでしてきました。ほとんどがおとなしい月ノ輪熊でした。 市場にも行きました。野菜から肉・日用品・服まで、ありとあらゆる物を売っています。ちなみにチンゲンサイ一束で1元(15円位)、缶ジュ−スが3元でした。庶民はみんなこういう安い市場で買物をするそうです。それでも思ったのだけど、現地の通貨価値から考えると、中国の物価は決して安くはないと感じました。特に都市部のインフレはひどくて、そのせいか財政難にも関わらず最近政府は公務員の給料を3割(!)程度引き上げる決定をしました。生活難の不満が法輪講の蔓延の背景にあることを考慮しての決定だそうです。屋台で売っていた肉や魚の串焼きがおいしそうでしたよ。茶房(タバン)にも入りました。喫茶店なのですが、暗い中にピンクの照明が怪しすぎる。おまけに仕切りがあって、小部屋のようになっています。これは秘密の話をしたり、男女がいちゃつくためにあるそうです。要するに昔の韓国のタバンなんですね。こういう風俗は伝わるのが早いです。他にも按摩部屋と称する店で、按摩以外のサ−ビスもしてくれるらしいとパクさんが言っていました念のために言っておくけど、それには行ってないですからね。ホントだってば。でも、繁華街といってもキャバレ−やクラブ等があるわけもなく、ただカラオケやタバンが数店並んでいるだけのことで、日本のそれとは比較にならない位おとなしいものでした。ここはやはり中国です。 延吉を出て郊外に向かうと、すぐにのどかな田園地帯が広がっていました。牛がのんびりと田畑を歩いています。アジアで最大面積の果樹園の横も通りました。ここでは梨やリンゴなどの栽培をしているそうです。小学校の運動場では子ども達がサッカ−に興じていました。中国では野球は全然知られていないとのこと。パクさんを通じて以前幼稚園の園長をしておられた方にお目にかかる機会があったのですが、幼稚園から遊びや歌など様々な民族文化に触れさせているとのこと。その方のお子さんは延吉市内から少し離れた寄宿制の私立小学校で学んでいて、経済的に余裕のある家庭では私立学校に通わせていることが多いそうです。 ホテルのテレビはチャンネル数が多く、20近くのチャンネルがありました。中国ではテレビのケ−ブル化が一気に進んでいるらしいです。朝鮮族自治州だけあって韓国のテレビドラマを流しているチャンネルもちゃんとあり、チャン・ドンゴン主演の「サラン」を放映していました。日本のドラマも同様に放映していて、鈴木京香主演の数年前のドラマをやっていましたよ。こちらは中国語にふき替えしていました。 延吉空港でおもしろい物を売っていました。なんと北朝鮮の記念切手です。さすがに国境近くの街です。日本人や韓国人観光客がおもしろがって買っていくそうです。私も幾つか買って、北朝鮮の外貨獲得に貢献してきましたよ。さらにパクさんの知り合いから北朝鮮のお札を入手することができました。これは超レア物です。在日韓国人で持っている人はあまりいないだろうね。うらやましい?ふっふっふっ。しかし、まじめな話、ここで気楽に自分が遊んでいる間にも、ほんの200キロ位先の北朝鮮国内で同胞が飢えに苦しんでいるかと思うと、正直言ってとてもうしろめたく感じました。延吉市内で物乞いをする北の子ども達がいるとの話も聞きましたし。本当に民衆に食料が届いているのか疑問なのですが、やっぱり食料等の人道援助に協力しようと思いました。それ位しかできることがないですから…。 今回の延吉の旅では現地の朝鮮族の方にガイドしてもらったおかげで、朝鮮族同胞の暮らしぶりについて、より深く知ることができたと思います。やはり旅の醍醐味はこんな風に人と触れ合うことだな、とあらためて感じながら私は延吉を後にしたのでした。 *今回、15分程度ですが延吉の街の様子をビデオカメラで撮ってきたので、 一度機会を設けて、みなさんにお見せしようと考えています。
前回、<皇国史観>という誤った思想が日本人全体に広がったため、戦前の日本人は周囲のアジアの諸民族を軽蔑し、侵略戦争を仕掛けてたくさんの人々を殺してしまった…ということを書きました。私の友人が以前こんな経験をしたそうです。その友人は電気関係の工事の仕事をしていているのですが、ある日、一人のおじいさんの家に工事に行ったそうです。家の中に入ると部屋の壁に軍刀(昔、日本の兵隊が持っていた刀)が掛けられていたので、友人は何気なく「立派な刀ですね」と言いました。そのおじいさんは何と答えたと思いますか?「そうじゃろう。若い頃、こいつを使って大陸でたくさん(人を)殺ったもんじゃ。中国や朝鮮の奴らを、20人位はぶった切ってやったよ」 そういうことをいかにも自慢そうに、にこにこ笑いながら言ったそうです。このおじいさんが本当に20人も殺したかどうかは分かりませんが、まあ、少なくとも何人かは本当に殺したのでしょう。もしかしたら男の兵隊だけでなく、女性やお年寄り等の非戦闘員も殺したのかもしれません。でも、そのことを全然悪いと思っていない。(戦争中で殺すか、殺されるかという状況だったとはいえ、結果的に外国で何人も人を殺してしまった。私に殺された人達は、さぞ無念だったことだろう) 少しでも良心の痛みを感じていればこんな風に考えるのが普通だと思うのですが、このおじいさんは心の中に痛みのかけらもないようです。痛みがあれば、少なくとも人前でこんな風に自慢したりはしないでしょう。
そして、困ったことにこういう人達が今までの日本に少なからずいたし、いるのです。<皇国史観>という間違った思想による<マインドコントロ−ル>が、今だに解けずにいるのです。また、こういうおじいさんに育てられたので、その影響を受けて同じような意識を持っている人達が君達の両親の世代にも少なからずいます。(アメリカ等の連合国に日本が負けたから、日本が悪く言われるんだ。アメリカに負けさえしなかったら、日本がアジアの連中を導いてやって、アジアの連中から感謝されたはずだ。それなのにしつこく日本の悪口ばかり言いやがって、恩知らずめ!) こんな風に考えているのですね。自分達のしたことを客観的に見直し、二度と過ちを繰り返すまいと前向きに考えずに、全て人のせいにして自分達の行為を正当化しているわけです。そういう考え方の実例を知りたければ書店に行って、「いい加減にしろ、韓国」や「中国・韓国、仮想敵国の勧め」、「戦争論」等という威勢のいい題名の本を探してみてください。すぐに見つかりますから。 私はこういう類の本を読むと、いつも心の中が不愉快な気持ちでいっぱいになります。なぜならこういう本の著者やそれを好んで読むような人達は結局のところ、他のアジアの国の人々が嫌いなのだということがよくわかってしまうからです。愛情があってあえて厳しいことを言うのならば別に嫌な気持ちにはならないのですが、ただ相手のことが嫌いで悪口を言いたいだけなのが見えてしまうのです。友達など私達の身の回りの人間関係と同じことですね。また、こういう人達は他のアジアの国の人々をダサいなどと思って馬鹿にしています。でも、考えてみると変ですよね?アジアはダサいって言ったら、日本人って一体何人?日本人は白人?アメリカ人?イギリス人?違いますよね。日本人は地理的にも文化的にも、アジア人以外の何者でもないことは明らかです。だからアジアがダサいっていうことは、当然自分たちもダサいということになるのかな?本当は日本人って、自分で自分のことが嫌いなのかな、なんてふと思ったりもするのです。外国人が日本に来て驚くことの一つが、TVや雑誌等の広告に日本人でない外国人、というか、<白人>が非常に多く出ていることだそうです。皆さんは、どう思いますか?ニホンッテ、ダサイ?ダサクナイ? 今、日本と他のアジアの国々との結びつきは、昔に比べてとても強くなっています。経済的にも以前はアメリカとの貿易が圧倒的だったのですが、今では日本の貿易の半分位がアジアの国々とのものです。今の日本の不況の大きな原因の一つに、最近のアジアの経済危機があると言われています。近隣のアジア諸国の経済が厳しくなると日本も厳しくなる。また、日本の経済の善し悪しがアジアの国々にも影響する。既にそういう関係になっている現在、もしさっきのおじいさんのような古臭い考えを持っている日本人が増えたらいったいどうなるでしょう。みなさんは、自分のことを馬鹿にしている相手と本当の友達になれますか?表面上はきれいごとを言っても、相手を馬鹿にしている気持ちというものは必ず相手に見抜かれるものです。 (日本人はどうやら私達のことを馬鹿にしているらしい。むかつく連中だ。確かに今まで日本はアジアで一番の先進国で、日本から教えてもらうことやお金を投資してもらうことが必要だったが、今ではアジアの他の国々も着々と力をつけてきている。例えば空港は関西空港みたいな立派な空港が香港にあるし、2001年には韓国のインチョンにもできる。シンガポ−ルや香港には世界的な大銀行があり、先端技術の分野でも台湾製のパソコンの実力はよく知られるようになってきたし、韓国の半導体の生産量も年々上昇している。韓国の来年の造船量は日本を抜いて世界一になる見通しだし、世界最大のコンテナ輸送会社「エバ−・グリ−ン社」は台湾の会社で、香港の「ウィ−ロックグル−プ」は世界一の船主だ。そして何よりも中国には13億人もの、これからどんどん発展していく巨大な市場がある。日本人が私達を今までのように馬鹿にするなら、そんむかつく日本なんてもういらないよ) もし、日本以外のアジアの国々がこんな風に考えて日本を仲間外れにし始めたとしたら……21世紀の日本の将来はとても暗いものになるのは間違いありません。実際に、今年の夏、私は中国の北京に遊びに行きましたが、今の中国の都市の想像以上の発展ぶりに驚かされました。粗末な人民服を着たたくさんの人々が自転車に乗って道路を走っている…そういうイメ−ジが過去のものになりつつある、ということを実感しました。非常に巨大なビルが立ち並び、立派な造りの百貨店では日本製品と大して変わらない服や電化製品が売られ、それらを買いに来た人々で賑わっていました。マクドナルドでたくさんの人達に混じってチ−ズバ−ガ−セットを食べ、レコ−ド店で<ココ・リ−>という台湾の女性歌手のCDを買い(酒井法子のポスタ−が貼ってありましたよ)、車の渋滞にうんざりしながらタクシ−に乗ってホテルに帰り、北京ビ−ルを飲みながら、部屋のテレビで20チャンネルぐらいある中からおもしろそうな番組を選んで見ましたよ。もちろん経済発展と共にいろんな問題も生じているし、中国全体が豊かになっているわけでもないのですが、このまま発展していけば21世紀には確実にアジアで最大の国になることを肌で感じてきました。 一番肝心なことは、そういう21世紀の世界を主役になって生きるのは君達であるということです。さっきのおじいさんや君達の両親の世代のような“オ−ルドジャパニ−ズ”から、私達の世代、君達の世代へとバトンが手渡されていくのです。古い世代の古い価値観を脱ぎ捨てて、新しい日本の価値観を築いていかなければならない、もう日本はそういう時代に来ている。そんな風に考え始めた人達、“ニュ−ジャパニ−ズ”が私位の世代の中から少しずつ生まれ始めている。最近そんな風に感じています。そういう人達は日本と他のアジア諸国との関係も古い世代とは違った視点で捉えて、新しい関係を築こうとしています。“オ−ルドジャパニ−ズ”がダサい、劣っているという偏見の目でアジアを見ていたのを超えて、偏見のない白紙の心で他のアジアの国々、とりわけ近隣の東アジアの国々を見つめ始めているのです。そうすると、今までは見えていなかった“素敵なアジア”が少しずつ見えてきました。こういうことは具体的に言わないとよく分からないので、芸能界を例にとってお話してみましょう。 今から4年前、私はある香港映画を見て衝撃を受けました。香港映画なんてブル−ス・リ−やジャッキ−・チェンのカンフ−映画のイメ−ジしかなかった私にとって、その映画の斬新な映像や音楽、セリフや役者の演技等、全てが新鮮でオシャレでとってもかっこよかったのです。その映画の題名は「恋する惑星」。見たことのある人もいるかもしれませんね。で、その映画に主演していた男性の俳優と女性の俳優のファンになりました。それだけならば何ということはない話なのですが、重要なことは私以外にもそう感じた人達がこの日本の中でたくさんいたということです。その証拠にそれから数年して、その映画の主役の男優が日本でも大ブレイクしました。誰のことが言いたいのか、もうわかったかな?そう、<金城武>のことを言っているのです。この「恋する惑星」がマスコミで話題になって金城武が日本でブレイクした現象を、私は日本人の他のアジア諸国に対する意識が少しずつ変化し始めた前触れだと考えています。 金城武がなぜ多くの日本人に新鮮に映ったのでしょう?金城武は国籍は日本ですが、生まれ育ったのは台湾です。お父さんが日本人でお母さんが台湾人。台湾の日本人学校に通っていたから、日本語も台湾語(中国語)も話せる。また、高校は台湾のアメリカンスク−ルに通っていたので英語もペラペラです。台湾で歌手としてデビュ−し、香港映画にも出演して人気スタ−になり、日本でも映画やドラマに主演してブレイクしました。韓国でもCM等に出演してよく知られています。今、アメリカではジャッキ−・チェンを初めとする香港スタ−が大人気なので、もしかしたら金城武もきっとハリウッドに進出してアジアだけでなく世界的なスタ−になるかも、と私は思っています。 この金城武が以前雑誌でインタビュ−に答えているのを読んだのですが、「自分は何人だと思いますか?」という質問にこう答えていました。「日本に来るまでは自分のことを日本人だと思っていました。でも、実際に日本に来て見たら、自分がいったい何人なのか、よく分からなくなりました。でも、今はそんなことはどうでもいいことだと思っています。僕は僕なんだって。日本にも友達は多いし、日本のゲ−ムが大好きだし(金城武はかなりのゲ−ムファンらしいです)、仕事や遊びでしょっちゅう来るけれど、住むのは生まれ育った台湾がやっぱり落ちつくかな」 私も在日KOREANとして比較的金城武に似た境遇にいるので、彼の言いたいことは何となく分かります。そして、金城武のこういう個性が、アジアとの新しい関係を模索し始めている“ニュ−ジャパニ−ズ”のハ−トにとても新鮮に映ったから、日本でも人気が出たのでしょう。 「恋する惑星」に主演していたもう一人の俳優<フェイ・ウォン>もブレイクしています。実はこの女性は歌手が本業で、もともとは香港でデビュ−したのですが、今や東アジア全域で大人気のトップスタ−です。北京に旅行に行った時、街でよく彼女の歌声が流れているのを聞きましたよ。今年、日本でもゲ−ム「ファイナルファンタジ−8」の主題歌を歌ってヒットさせ、武道館での来日コンサ−トも大成功させました。7月に「HEY!HEY!HEY!」に出演したので、知っている人も多いのではないかと思います。役者としても素晴らしい才能を持っている人なのですが、今度「2046」という香港映画で、なんと日本の木村拓哉と共演する予定だそうです。 中国語圏の芸能人の活躍は、アジアだけに留まりません。最近ではアメリカにも進出して、ハリウッド映画で活躍する人がたくさんいます。みなさんもよく知っている<ジャッキ−・チェン>は映画「ラッシュアワ−」の大成功で、今ハリウッドではNO.1のアクションスタ−です。同じく香港映画の大スタ−である<チョウ・ユンファ>という俳優もアメリカで成功していて、今ジョデイ・フォスタ−というトップ女優と共演する「アンナと王様」という大作の撮影中です。俳優だけでなく映画監督として活躍している人も多いです。たくさんいるので一人だけ紹介すると、ジョン・ウ−というアクション映画の監督がいます。日本でも大ヒットした「フェイス・オフ」という映画を撮った人なのですが、独自の演出スタイルを持ったとても素晴らしい監督です。レンタルビデオで借りて一度見てみてください。凄くおもしろいですよ。今はトム・クル−ズ主演の「ミッションインポッシブル2」を撮影しています。 ハリウッドでの中国人スタ−や監督の大活躍は、ある意味で新しいアジアの時代を象徴していると言えます。そしてこれは“オ−ルドジャパニ−ズ”にとってはとても不愉快なことです。なぜなら彼らが馬鹿にしてきた中国人が、今、映画の世界では日本人よりも世界的に活躍しているからです。現在、100億円規模の超大作ハリウッド映画に主演したり、監督したりできる日本人は残念ながら誰もいません。でも、それを嫉妬して無視しようとするのか、それとも同じアジア人として応援しようとするのか、そこら辺が別れ道なのかもしれません。同じアジア人として応援しようとする気持からは、次は日本人も何とかチャンスをつかんでがんばろうとか、韓国人も負けてられないとか、そういう前向きな姿勢が生まれてくるものだし、それが自分達の成功につながるかもしれないですよね。時にはパ−トナ−として、時にはライバルとして、切磋琢磨しあう中から新しい未来が生まれてくるように思います。それはアジアの人々に友人として“敬意”を払うということです。多くの“オ−ルドジャパニ−ズ”にはそれができなかったのです。 みなさんの学校には在日KOREANの生徒がいるでしょうか。もし、いたとしたら、その人達にお話します。あなた達は昔の私のように、自分が何人かわからなくてつらい気持ちになることもきっとあるでしょう。でも、私がはっきりと断言します。あなた達は言葉の本当の意味で「国際人」です。いや、まだ「国際人」とは言えないな。その卵です。自分のル−ツに誇りを持ち、「国際人」として日本とKOREAのかけ橋になって生きるのか、そんなことは私は知らない、興味ないと思って卵の中に閉じこもって生きていくのか、決めるのはあなた自身です。どんな生き方をしてももちろん自由です。でも、できるならば、自分が在日KOREANとして生まれたことに意味を見い出せるような生き方をして欲しい。“素敵なKOREAとアジア”、そして“素敵な自分”を見つけて欲しい。そして、日本人のみなさんは在日外国人の友達の揺れたり、悩んだりする気持ちを受けとめてあげられる心の広さを持って欲しい。そう願っています。 最後に韓国のアイドルグル−プを紹介して、話を終えましょう。中国語圏の芸能人の活躍ぶりに比べると、まだ日本ではあまり知られていませんが、韓国でも歌謡曲(日本がJポップスなら韓国はKポップスかな?)の人気は高く、魅力的な歌手がたくさんいます。特にアメリカに移民した人の子ども達が韓国に帰って芸能界で活躍しているので、リズム&ブル−スやヒップホップと呼ばれるジャンルの音楽が盛んです。宇多田ヒカルやドラゴンアッシュの成功で日本でもその種の音楽が流行していますが、韓国では何年も前から人気があります。で、ここ数年間、韓国で一番人気のある男性アイドルグル−プの<H.O.T>を紹介します。日本の雑誌ではよく“韓国のスマップ”などと紹介されることが多いのですが、彼らは全員10代で役者の仕事はせずに歌手に専念しており、歌もダンスもアイドルとは思えないほど非常に上手です。台湾でも大人気なのですが、北京のレコ−ド店内で彼らのミュ−ジックビデオが流されていたのには驚きました。そういえば中国でもコンサ−トをしたのです。かっこいいでしょう?日本にも熱心なファンがいるそうです。 女性のアイドルグル−プでは<S.E.S>が人気です。こちらは日本でもデビュ−したので、知っている人もいるでしょう。3人のメンバ−のうち、向かって一番左のシュ−ちゃんという女の子は私と同じ在日KOREANです。日本の川崎県で生まれ育ち、中1の時に韓国に行ってアイドルになり、現在は韓国・日本を中心に活躍しています。もちろん誰もがこんなにラッキ−なわけではないし、凄く努力もいることなんだけれども、自分に卑屈にならずに前向きに生きているからこそ魅力的でいられるんだな、と特にこのS.E.Sと金城武を見ていて思います。香港・台湾・中国・韓国という具合に東アジアの芸能人をいろいろ紹介してきたけれど、マレ−シアやベトナム、タイ、フィリピンなどの東南アジアの国々でも個性的で素敵な芸能人がいるし、インド映画のおもしろさも最近日本で話題になっています。要するに私達が知らなかっただけなんですね。 S.E.S.の日本でのデビュ−曲の題名は“めぐりあう世界”というものなんですが、その言葉がとても気にいったので、この手紙の題名に使わせてもらいました。みなさんが主役になって活躍する21世紀には、日本と他のアジアの国々との関係はますます密接なものになっていくことでしょう。けれども、それを心よく思わない人々もまだ少なからずいます。(日本だけがアジアで一番であるべきだし、日本だけが豊かであればいい。他のアジア諸国との共存共栄なんてありえない) こんな風な古臭い考えに縛られた人達の感情的な言葉に踊らされて孤立の道を歩むのか、アジアの中の一員として信頼を基に、共に栄える新しい関係を築いていこうとするのか……これからの日本の進路はみなさんが決めていくのです。アジアと日本が“めぐりあう”これからの世界で、私達在日KOREAN・在日外国人が伸び伸びと活躍でき、そのことによって日本がより開かれた、豊かな国になってほしい、そして何よりも平和な日本とアジアであってほしい、と願っています。 (了)
それではみなさん、アンニョン!! |