<アジアン倶楽部通信 1998年9月号>

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アンニョンハセヨ?みなさん、お元気ですか?台風の被害はなかったでしょうか。私ナグネは台風7号と翌々日の大雨で発令された警報で学校が臨時休業になり、こんなんで給料もらっていいのか?と、ちょっとだけ良心が痛んでしまいましたよ。でも当然、教員は休みというわけではなく、会議やら溜っていた仕事やらを片付けて過ごしたのですが。 さてさて、その警報デーに挟まれた23日祝日の朴 再姫(パク ・ チェヒ)セアム舞踊団日本公演鑑賞会の報告です。今回の参加者はZ.Nさん、U.Zさん、私、そしてニューフェイスのQ.Nさん、L.Lさん、T.Nさんでした。会場は以前、白 香珠の公演でも行ったことのある国際交流センターでした。行政がバックアップして宣伝がいき渡っていただけあり、ほぼ満席状態でした。 パンフレットによると、このセアム舞踊団は韓国忠清北道の清州を拠点に活動しており、伝統舞踊をベースにしながら現代的なテーマを追求した創作舞踊にも表現の幅を拡げ、国内外で大きな評価を受けている舞踊団であるそうです。団長の朴 再姫さんは数々の芸術賞および韓国国民褒賞を受賞している高名な舞踊家で、プログラム最初の「僧舞」を自ら独舞し、貫禄を見せつけてくれました。次の演目は「地の音」というもので、サムルノリ(四物遊戯)のチャンゴ、プク、チン、ケンガリの4楽器を打ち鳴らしながらの女性中心の群舞でした。韓国の観光地などで鑑賞できる農楽(ノンアク)を思い浮かべたKOREANの人、はっきり言ってレベルが違い過ぎます。正しくはサムルをモチーフにした創作集団舞踊という感じで、ダイナミックかつ流麗な踊りに観客は圧倒されていました。衣装やライティングの色彩センスも素晴らしく、本国の韓国人は単に派手な色を好むと勘違いしている私の家族に見せてやりたいです。日本人とは色彩感覚が違うんだっちゅうの。(でも、確かに金色も好きだが) 最後の演目は「荒土の世界」という昨年の舞踊芸術最優秀作品賞等を受賞し、現代演劇的な感覚を取り入れたストーリー性のあるもので、後で聞くと、みなさん、これは何を象徴しているんだろうなどと意味を考えながら見ていたそうです。ちょっと難しかったかな。私は踊りもさることながら、大地や生き物をイメージした衣装や舞台のセット、伝統楽器とシンセサイザーやバイオリンなどを組み合わせた音楽が印象的でした。 実演時間が1時間程度と短かったのが不満ですが、全体を通して見た印象としては単なる民族舞踊公演というより、秋にふさわしい立派な芸術を鑑賞した、という感じです。ある人は「目からうろこが落ちた」と言っていましたが、私も同感です。特に、2番目の「地の音」の踊りと演奏は全ての在日KOREANに見てほしいと思いました。どんなジャンルでもそうですが、最高レベルのアーティストの表現って、こんなに力強く、深いものなのだな、と実感すると、今まで自分の頭の中で考えていた「民族」のイメージの卑小さに気付き、「うろこ」が落ちるのだと思います。百聞は一見に如かず、ですね。また「宝物」が増えてうれしいです。もう一度、来てくれないかな? 公演鑑賞後は、恒例のお食事会をしました。U.Zさんが紹介してくれたコリアンフードのお店。海の幸チヂミの見た目の美しさと美味しさには感動しました。チャプチェもグッドでした。白滋の皿等も品があって、よい器で食べるのって気持ちがいいですね。キムチ、冷麺、石焼きピビンバプ、焼肉と定番メニューながら一つ一つきちんとした本場の味で、お腹いっぱい飲んで食べて一人4500円は安かった!さすがです。ニューフェイスの御三方もやはりというか、楽しい、ユニーク?な方ばかりで、自称海賊の子孫のT.Nさんの大らかな人柄が伝わるお話に、Q.Nオンニ(お姉さん)のするどい突っ込みが入り、車イスではるばる奈良から来られたL.Lさんがにこにこされているといった調子で夜も更けていったのでした。 ![]()
シンガポールを代表するミュージシャンにディック・リーという人がいる。この人が1989年に発表したアルバム「マッド・チャイナマン」というアルバムが、日本人の目を初めて同時代のアジアのポップスのみならず文化に向けさせたと言っていいだろう。(もちろん今でも音楽評論家など一部の日本人に知られているに過ぎないのだが) シンガポールはリー・クアンユ−前首相のカリスマ的な影響力の下、急速に成長を遂げてきた近代的な都市国家で、中国系のみならずマレー系、インド系など様々な民族が共存する多民族国家だ。これは中国系の家庭で育ったにもかかわらず公用語の英語しか話せないディックが、シンガポール人としての自分のアイデンティティをポップスの形式で表現したアルバムで、中国やインドネシアの民謡、タブラや二胡などの民族楽器をロックやラップのリズムでブレンドしたカラフルで不思議な魅力を持つ作品だ。このディック・リーがしばらく前にNHKの番組に出演しインタビューを受けていたのだが、その時に彼の語っていた言葉がとても興味深く、在日KOREANの私にとっても多くの示唆を含む内容だった。
「私はこのシンガポールという若い国で生まれ育ち、自分の人生の大半を自分探しに費やしてきた。なぜなら自分自身を知らなかったら創造などできないからだ。自分探しと新しいアジア音楽の創造とは結びついてくる問題。だから、問題は自分がアジア人と自覚して何をするかだと思う」 「私達は、“モダンエイジアン(新世代のアジア人)”なのさ。住んでいる場所は、“WEAST(東洋EASTと西洋WESTを合体させたディックの造語)”だ」 「以前、東洋と西洋の音楽をアルバムの中で混ぜ合わそうとしていた時期があったんだが、なかなかうまく混じってくれないんだ。まるで水と油のように。なぜなのかよく考えてみた。すると気づいたのさ。自分自身が東洋、西洋というように切り離して考えていたことに。でも私達はマドンナと着物を両方受け入れられる世代なんだよ。前の世代と違ってね。東か西かではなく、両方のいいところをもらえばいい。こうした考えの人が増えれば新しいアジア文化が生まれるだろう」 もちろん現実には国家や民族の枠組はまだまだ強力に機能し続けるだろう。例えばインドネシアの暴動で中国系の人達が略奪・暴行のターゲットにされ、華僑資本が同国からの資本引き上げを報復めいた言動でちらつかせているように、現実には同じアジア人といってもそう簡単に意識を共有できるわけではない。ただ、少なくとも日本におけるアジア系在日外国人にとってはこの“モダンエイジアン”という言葉が示す考え方、生き方は一つの救済にならないだろうか。なぜならそれは、日本人自身が新しい日本人としてのアイデンティティを模索している歩み(それはまだ静かな足音に過ぎないけれど)と基本的に方向性が一致しているからだ。なんだか話が抽象的になってしまって申しわけない。私もあまり整理できていないので、次回、もう少し考えてみたいと思う。 ![]() メンバーのD.Lさんが、先月この通信で紹介した映画「ボンベイ」をご覧になったそうで、感想を送ってきてくれたのでみなさんにご紹介します。D.Lさんは某大学の院生で、この映画も授業の中で見られたそうです。
こんな勉強なら楽しそうですね。D.Lさん、また、お便りくださいね。
それにしても最近の中華圏ムービーの日本での上映ラッシュには驚きますね。一時のブームという感じでなく、完全に定着したという感じです。以前は主だった作品は大体カバーしていたつもりでしたが、そろそろ全部を追いかけることは不可能になりつつあります。その中で、この秋から来年にかけて公開予定の大作、話題作をいくつかご紹介しましょう。 まず最初は、10月中旬公開予定の「フラワーズ・オブ・シャンハイ」です。「悲城情市」でカンヌ映画祭最優秀作品賞を受賞した台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督がトニー・レオンと日本の羽田美智子を主演に据えて、19世紀末の上海の遊廓での恋愛模様を独特の映像美で描きます。同じく10月中旬公開予定の「リプレイスメントキラー」。“亜州影帝”チョウ・ユンファのハリウッド進出第一作で、昨年の全米公開時には興行収入2位を記録するスマッシュ・ヒットとなりました。盟友ジョン・ウー監督のプロデュース下、非情になり切れない殺し屋を演じるそうですが、香港時代のかっこよさはハリウッドでも健在か?次に、日本、中国、フランス、アメリカの共同出資で製作費60億円の超大作「始皇帝暗殺」。中国を代表するチェン・カイコー監督、中国を代表する女優コン・リー主演のこの作品はアジアの映画史に間違いなく残ることでしょう。100億円近くかけて製作された紫禁城のセットは映画撮影後も解体されることなく、2000年にはテーマ・パークになるそうです。(ということは実質的な製作費は160億円と、タイタニック級の物凄い額ですね) 製作費に見合った内容になっているかどうかは、映画館で確認しましょう。年末には中国近代史上最も有名な姉妹を描いた「宗家の三姉妹」が待っています。日本も出資しているこの映画の主演は「ラブソング」のマギー・チャンと、007で中国エージェントを演じて主演のピアーズ・ブロスナンよりかっこよかったミシェール・ヨーです。また、現在撮影中で来年春にはアジア6か国で公開されるレスリー・チャンと常盤貴子共演の「月へ、星たちへ」、さらに金城武、トニー・レオン、マギー・チャンの共演、そして木村拓哉、竹野内豊の出演も噂されているウォン・カーウァイ監督の新作「花様年華」が待機しています。 こうして並べてみると一目瞭然なのですが、中華圏の映画人のボーダレスな活躍ぶりには全く驚かされますね。現在ですらこうなのですから、12億人の巨大市場を有する大陸中国が本格的にテイク・オフする21世紀にはいったいどうなることやら。都市部の経済が中進国段階に達するのはそれ程遠い未来ではないでしょうから、21世紀初頭には映画や音楽ソフトを気軽に楽しむことのできる購買力を持った、日本の数倍の人口の巨大市場がアジアに誕生するわけです。こう考えるとディズニーが中国市場を意識して「ムーラン」を製作した理由が分かります。今からはっきり予言しておきますが、来世紀のアジア圏の文化をリードするのは間違いなくCHINESEの人々でしょう。また、その影響力はアジアのみに留まらず、世界中に及ぶと思います。そういう状況の中で日本社会のアジアに対する意識も相当変化していくのではないかと期待しているのですが。みなさんはどう思われますか?とにかく、これからも多くのチャイニーズムービーが楽しめるわけなので、みなさん、今からたくさん見ておきましょう!
![]() それではみなさん、アンニョン!
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